2023年12月15日

「黒い海」は未完だ  

い本を読んでしまった。題名は 黒い海 「船は突然、深海に消えた」(伊澤理江著 講談社刊)
「黒い海」は未完だ  
のはじまりは2008年6月23日の朝だった。福島県いわき市の漁業会社酢屋商店に所属する網船第58寿和丸(すわまる)は太平洋でカツオの群を追っていた。第58寿和丸は135トン、乗組員は船長以下20名だ。漁は網船が中心で他に魚群を見つける探索船と獲った魚を港へ急送する2隻の運搬船の計4隻がチームを組んでいる。このところ連日休みなしの作業が続いていた。仲間の疲労を配慮した船長は、穏やかな海況を利用して全員にしばしの休息をとらせることにした。船は風上にパラシュート・アンカーを入れ、穏やかな波のうねりに乗って漁師たちは束の間の休憩時間をとっていた。事件はそのときに起きた。

然突き上げるような衝撃を受け、第58寿和丸はよろめいた。続いて第二波の衝撃があり網船は大きく右に傾斜した。あっという間に浸水がはじまり第58寿和丸は数分の間に沈没した。油が浮かぶ黒い海に投げ出され救助された3名を除き、船長以下17名が船と運命を共にした。現場は犬吠埼から300kmはなれた太平洋。水深5,000m余の地点である。沈没の原因は何か?。当局と専門家の事故調査委員会が調査に着手し、三年後に「転覆の原因は波」であった、という事故調査報告書が公表された。

58寿和丸沈没事故から11年後、著者の伊澤理江は別の取材で福島県いわき市を訪れ、偶然に第58寿和丸の関係者に出会う。伊澤は英国のウエストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程を修了。英国の新聞社、PR会社を経たフリージャーナリストだが、船はもちろんのこと漁業や海事の知識はない。第58寿和丸の転覆原因を追求するため初歩からの勉強と調査を重ねてた。そして到達した疑惑の焦点が「潜水艦」だった。1970年以降、世界の海で発生した潜水艦による事故が30件も(これ以外にも確たる証拠のない事故もあるに違いない)発生しているという。この本を読んで、世界の海底では人知れない争いが頻繁に起きているのではないか、という積年の疑惑にようやく光が当てられた印象だ。だが第58寿和丸沈没の原因は依然として「波」のままである。著者の追求はまだ終わっていない。








Posted by はじめ at 08:43│Comments(0)
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